瞬くような俊敏性……パドルシフトのクイックな反応が第一印象だ。ドライバーと一体感のあるボディサイズとのリンケージが素晴らしい。直噴化した高性能ターボエンジンは実に滑らかな吹け上がりで、２リッターながら３リッター以上の馬力（256ps）と低域からのトルク感を提供してくれる。
軽快感と安定感……相反する要求に見事応えるAudiに敬服であり、“S”シリーズである証だ。上質なエグゾーストノートと相俟って、大人のスポーツコンパクトとして、日常の頼もしい相棒になるはずである。故にその鍵となる、他社とは一線を画す“クアトロ”システムは、Audiをチョイスする大きくクレバーな理由になると云えよう。
プレミアムなマテリアル感……最近のAudiに目覚ましい進化は、動力性能や環境性能に留まらず、実のところ細部に宿る質感にある。希少なレザーやウッドで飾り立てたり、大げさなエアロパーツで威圧するような浅はかさは一切ない。あるべき所にあるべき素材を使うといった、機能や雰囲気を優先する気遣いようなのである。とても刺激的なドライブフィールを、大人の衣装で包み込む魅力を存分に味わえる名車である