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PORSCHE 911 Carrera S (997 model)

数字には表れない底力…ポルシェの魅力は何と言っても、底知れぬパフォーマンスだ。噴火する活火山のマグマのように、どこまでも湧き出てくるパワーは、クルマ好きを虜にしてやまない。数字のトリックによって、他社の何とかして捻り出しているパワーとは異なり、ポルシェの加速は風を切る厚みや密度など、全く別の質感である。
洗練された脱却…世代前のポルシェには人を寄せ付けず、何処となくストイックな空気が流れていた。クルマ好きには分かり、それを自称することに存在意義があったことが、かえってポルシェ離れを加速化していたと言ってよい。しかし、このポルシェに乗って驚かされたのは、自己を解き放ったような開放感である。荒々しさを捨て、洗練され、洒落た印象が増したことで、ドライバーのみならず、周囲の視線も温かいことに気が付くはずだ。
伝統のチューンアップ…この“Carerra S”の特徴は、伝統の“RS”モデルと同じで、Carreraの3.6Lユニットを3.8Lにまでボアアップした心臓部である。355馬力にアップした、30馬力分はトルクに回されて、どの速度域でも楽しく、豊かな乗り味を提供してくれる。特に、加速すると共に高回転域で、背後から脳髄を刺激するエキゾーストノートが堪らない。この“Carerra S”は伝統の精神に、自由という魅力を纏った、新たなポルシェ時代の幕開けである。